2020年8~9月の本

「若者は活字離れしたのではなく、インターネットで活字を読んでいるだけ」と言ったのは森博嗣でした(たしか)。

 

例に漏れず私もインターネット活字中毒ですが、近所の図書館がグレードアップしたのを機に、書籍の活字に戻ってきました。気に入った本は買う方式です。還元させていただいております。

 

本の管理は読書メーターにほぼ任せているのですが、振り返りも兼ねて各月のオススメ本だけ別途まとめておこうと思い立った次第です。

 

ちなみに、教養してやろうじゃんとか文学嗜んじゃうぜ的な意気込みはゼロで、娯楽読書なのでジャンルがバラバラです。強いて言うならCコード10台(哲学・宗教・心理学)と40台(自然科学)が多く、好みが確立されていないのでフィクションはあまり読まないです。オススメをお待ちしています。

 

8月の3冊

入門 犯罪心理学

入門 犯罪心理学 (ちくま新書)

入門 犯罪心理学 (ちくま新書)

 

 犯罪心理学の本って結構あって、一般的には「連続殺人鬼のプロファイリング!」みたいな本のほうがウケるんですが、これはどちらかというと犯罪心理学の実践編。つまり、犯罪心理学という学問は社会にどう貢献できるのか?という視点ですね。

 

犯罪心理学はようやくエビデンスが揃ってきた学問らしく、ちょっと古い書籍だとすでに否定されている定説が平気で載っていたりするのですが、そのあたりもアップデートされているので入門書として良いかと(とはいえ2015年の本ですが)。

 

逆に、ロバート・K・レスラーみたいなものが読みたい人はそっちを当たったほうが間違いないですね。生々しい描写に加えて、目次前にCERO Zみたいな画像が平気で掲載されていて大迫力。いいのかなあれ。

 

とんでもない死に方の科学 もし●●したら、あなたはこう死ぬ 

いわゆる「空想科学読本」系の1冊。この手の「●●したらどうなるの?という荒唐無稽な質問に真正面から答える系の本」って昔から好きで、他には『ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか』もオススメ。

 

いろんな死に方が紹介されていますが、結構な確率で人体がプラズマ化して宙を漂うことになり、ロマン。あとはG(加速度)にやられて内臓がモツの概念になるケースも多いですね。

 

単純におもしろいので、笑いたいときにオススメです。シリーズ化して2冊目がほしいところですが、著者が亡くなっているそうで、無念。

 


猫のゆりかご

猫のゆりかご

猫のゆりかご

 

 2ヶ月間25冊読んで唯一のフィクションですが、啓示のような読書体験で興奮しました。

 

もちろんボコノン教*1も大好きですが、作中2人の男によって為される表裏一体・哲学と科学のプロレスは、わたしが長年抱えていた科学哲学におけるわだかまりへの解として受け止めました。
※母校で科学哲学の権威が教鞭を執っていて、その授業が非常に有意義だったので、卒業後も個人的に追究したいという気持ちが存在。

 

はぁ、わたしもアイス・ナインでこの世を去りたい……。

 

カート・ヴォネガット全短篇が2018年に出ているので別作品も読みたいのですが、図書館の予約がマジモンの渋滞を起こしており、2021年になりそう。

 

お気に入り作家入りです。

 

9月の3冊

図説 ハプスブルク帝国

図説 ハプスブルク帝国 (ふくろうの本/世界の歴史)

図説 ハプスブルク帝国 (ふくろうの本/世界の歴史)

  • 作者:加藤雅彦
  • 発売日: 2018/05/11
  • メディア: 単行本
 

 自分から手にとった本ではないのですが、今の自分に必要な知識をズバリ埋めてくれた素晴らしい出会いでした。

 

というのも、もともと美術館や博物館は好きだったものの、理系だったので(これは教養ある理系人間に対する冒涜と己への言い訳を7文字にまとめた表現)世界史についてまったく知らず、解説を読んでもハァ?という無念経験があったのです。

 

とはいえド正面から山川と向き合うだけの気合もなく……という感じだったのですが、この本はハプスブルク家」という主人公の視点で歴史を眺められてスルッと入ってきました。オーストリア、めっちゃちっちゃくなってもうたやん……。

 

図説なので見てるだけでも楽しいです。シリーズの他本も気になる。

 

[図説]毒と毒殺の歴史 

[図説]毒と毒殺の歴史

[図説]毒と毒殺の歴史

 

 今回取り上げた本のなかで、1冊オススメしろと言われたらこれをチョイスします。

個人的に毒本というジャンルがあるのですが(『毒草を食べてみた (文春新書)』など)、そのなかでも決定版かと。

 

蛇毒からポロニウム210まで、歴史上メジャーな毒や印象的な毒について、由来や中毒時の症状、有名な毒殺事件を踏まえて図解&紹介しています。自分の推し毒を見つけよう!

 

ちなみに、中世くらいまではヨーロッパ泥沼列伝といった趣なのですが、近現代に入った瞬間にロシアロシアアンドロシア、恐怖のKGB、どうしてそこまでという怒涛の「おそロシア」体験を味わえます。


意外に日本の事件も大きく取り上げられており、サリン以外にもあの元素がピックアップされています。日本ではサリンほどのインパクトはなかったと思うのですが、海外の受け止め方は違ったのかも。

 

倫理学入門-アリストテレスから生殖技術、AIまで 

 犯罪心理学に続いて倫理学に入門していますが、こちらのほうがオススメ度というか、読んでほしい度が高いです。なぜなら、倫理学は広く浸透するほど有効な学問だと思われるので。

 

ざっくり分けると、前半が倫理学の説明(倫理と道徳の違い、社会契約論や義務倫理学といった歴史的な流れなど)、後半が倫理学の実践(医療倫理や環境倫理など)という2部構成。倫理学のベースをさらう前半(とくに第1章)が若干難しいですが、最低限の哲学史を知っていればついていけます……と思ったけど、Amazonレビューで難しいって書いてあるな?まあそういうときもある。

 

個人的には終盤で出てくる「星界人との対話」が最高なのですが、これは筆者の品川氏とわたしのユーモアセンスが一致したところによるものかと。しかし、倫理学とSFって謎の相性を見せるときがありますね。

 

番外編

幸福論 

アラン 幸福論 (岩波文庫)

アラン 幸福論 (岩波文庫)

 

 岩波青の古典を今更紹介するんかいという感じですが、最近「入門書→解説書→原典」という読み方をしていて(アホなのでそうしないとカントなんかわかんないよ)、そのなかで現状一番気が合ったのが楽観主義のアランでした。

 

「楽観主義とか気楽そうでいいよね」って感じですがこれが真逆で、悲観して被害者ぶってるほうが楽なんですよね。うるせー。しかも、アランは「つべこべいわずにまずは幸福を希求して行動せんかい」としつこく言ってくるので、説教されてる感というか、結構しんどみがある。

 

哲学書ではなく文学として読めること、3~4ページの哲学断章で成り立っていること、文章が美しいことからオススメです。個人的にはポケット聖書的な感じで日々手に取る本になりました。

 

 

 

10月は予約していたユヴァル・ノア・ハラリ本が一気にきて祭りになりそうですが、読み切れるだろうか……。図書館の予約は計画的に!

*1:作中に登場する架空の宗教