2020年やってよかった買ってよかった大賞

2020年とは何だったのかを真面目に考えようとしたところ気が滅入ったので、ここはひとつ年末あるあるエントリ「買ってよかったもの」シリーズをやってみようかと。

今年は全力でリラックスの方向に振り切った結果、かなり自宅の快適度が上がりました。

 

自宅をカフェもどきにする

 元来お茶党だったのですが、コーヒーって1日に1杯は飲むことに気づいたんですよね。

なので、夏は水出しで、冬はハンドドリップで入れられる環境を整えるべく、信頼できるハリオに投資。そしてハンドドリップ中はぼーっとできるので心が整う。

ソーダストリームは夏にノリで買ったのですが、想像以上にかんたんにできて良い。お手入れ的な運用も面倒でなく、ありがたい。



 机の3D化

 フルリモートになったので、自宅PCと社用PCとモニタを狭い机に置いてたのですが、PC入れ替えたりなんだりがめんどくさいのと、春先にノリで16inchの液タブ買ったら置く場所なさすぎワロタってなったので、PCアームやモニタアームを使って机の上のスペースを活用中。あと液タブは良いよ。

その結果、トラックボールやキーボードを置けるようになり、置いたらめっちゃ捗ったので本当に良かった。ThinkPadの赤ポチ信者でしたが、トラックボールに宗旨変え。すまんな。

そして、荒ぶるケーブル類を整理すべくコードタワー買ったらこれまた最強で、一方黒ひげ危機一髪みたいになって美観を著しく損なっている。



良い空気を吸う

 アロマ関連で一番良かったのはお香。煙を眺めるのも心が落ち着くので、最近お風呂上がりにお香焚きながら読書するのが良い時間になってます。おすすめは鳩居堂の「KYUKYODO INCENSE あづさ」ってやつで、ジャスミンと白檀の良い香りです。最高。

空気清浄機は転がり込んできたものなのですが、ハウスダストや花粉由来のアレルギーが緩和されているっぽくて手放せなくなりそう。加湿機能つきで、最近は加湿せずに寝ると翌朝喉がカッサカサになるので、加湿は重要



スパ銭に行けないストレスを発散する

 

シャボン玉 重曹 680g

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  • 発売日: 2015/08/12
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
 
シャボン玉 クエン酸 300g

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 スパ銭というか炭酸泉を自宅でやりたくなり、とはいえBARTHは高いので、重曹クエン酸で炭酸泉もどきを実施中。重曹がほんのり多いくらいがバランス良さげ。

ただ、バスソルトのような香りはないので、炭酸泉やりつつフランキンセンスアロマキャンドル炊いてます。異常にムーディーになる



読書をする

インターネット活字時間を読書時間に置き換えればよいのでは、という気づきのもと、8月くらいから図書館に通うなどして98冊くらい読みました。

あくまで娯楽読書ですが、ある程度知りたい場合は任意カテゴリの入門書をガンガン読み捨てるのが一番定着する印象。もともと読書習慣がなかったので、熟読精読せずに数こなすようにしました。

区の中央図書館が徒歩20分ほどのところにあるので、散歩がてら通うのが楽しい。大型書店から街の本屋さんまで、棚作りを見るのも楽しい。

 

ちなみに、インターネット活字時間は読書時間には置き換わらない。知ってたよ。



番外編:買っておいてよかったもの

2020年に買ったわけではないものの、あってよかったのはこの2点。

 長さや表面が違うだけだろって感じですが、ストレッチポールはストレッチ用、フォームローラーはマッサージ用ってイメージなので、用途が結構違います。どちらか片方となった場合、ストレッチポールがおすすめ(結構応用できるので)。

フォームローラーは、表面にある凸凹に体重をかけて面で筋肉をほぐしていく感じ。私はとにかく筋肉から来る腰痛が重いので、背中とかふとももまわりをしっかりやるとだいぶ楽になります。

ストレッチポールは、もっとシンプルで、ポールの上に乗っかってゆらゆらしたり腕をバタバタさせたりして筋肉を伸ばします。これが猫背(巻き肩)の人に超おすすめでして、重力で肩が床に落ちて胸が開くので、真の深呼吸ができます。今まで深呼吸だと思ってたものは偽物だと思ったほうが良い。



番外編2:審議中

わたくしマジめの不眠症でして、オフトンイン時間と実際の睡眠時間の乖離がヤバかったのですが、瞑想(主に呼吸法)を取り入れた途端に即寝できるようになりました。

この手のはあまり信用していなかったのですが、瞑想が脳に与える影響を調査した下記本を読んでみて、試してみる価値はあるかなと。

 

 

DJI Pocket2は保護猫カフェで真価を発揮したのですが、もうちょっとお散歩カメラとしての価値を見極めたいなと。プロダクトとしてはめっちゃ気に入っております。




2020年8~9月の本

「若者は活字離れしたのではなく、インターネットで活字を読んでいるだけ」と言ったのは森博嗣でした(たしか)。

 

例に漏れず私もインターネット活字中毒ですが、近所の図書館がグレードアップしたのを機に、書籍の活字に戻ってきました。気に入った本は買う方式です。還元させていただいております。

 

本の管理は読書メーターにほぼ任せているのですが、振り返りも兼ねて各月のオススメ本だけ別途まとめておこうと思い立った次第です。

 

ちなみに、教養してやろうじゃんとか文学嗜んじゃうぜ的な意気込みはゼロで、娯楽読書なのでジャンルがバラバラです。強いて言うならCコード10台(哲学・宗教・心理学)と40台(自然科学)が多く、好みが確立されていないのでフィクションはあまり読まないです。オススメをお待ちしています。

 

8月の3冊

入門 犯罪心理学

入門 犯罪心理学 (ちくま新書)

入門 犯罪心理学 (ちくま新書)

 

 犯罪心理学の本って結構あって、一般的には「連続殺人鬼のプロファイリング!」みたいな本のほうがウケるんですが、これはどちらかというと犯罪心理学の実践編。つまり、犯罪心理学という学問は社会にどう貢献できるのか?という視点ですね。

 

犯罪心理学はようやくエビデンスが揃ってきた学問らしく、ちょっと古い書籍だとすでに否定されている定説が平気で載っていたりするのですが、そのあたりもアップデートされているので入門書として良いかと(とはいえ2015年の本ですが)。

 

逆に、ロバート・K・レスラーみたいなものが読みたい人はそっちを当たったほうが間違いないですね。生々しい描写に加えて、目次前にCERO Zみたいな画像が平気で掲載されていて大迫力。いいのかなあれ。

 

とんでもない死に方の科学 もし●●したら、あなたはこう死ぬ 

いわゆる「空想科学読本」系の1冊。この手の「●●したらどうなるの?という荒唐無稽な質問に真正面から答える系の本」って昔から好きで、他には『ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか』もオススメ。

 

いろんな死に方が紹介されていますが、結構な確率で人体がプラズマ化して宙を漂うことになり、ロマン。あとはG(加速度)にやられて内臓がモツの概念になるケースも多いですね。

 

単純におもしろいので、笑いたいときにオススメです。シリーズ化して2冊目がほしいところですが、著者が亡くなっているそうで、無念。

 


猫のゆりかご

猫のゆりかご

猫のゆりかご

 

 2ヶ月間25冊読んで唯一のフィクションですが、啓示のような読書体験で興奮しました。

 

もちろんボコノン教*1も大好きですが、作中2人の男によって為される表裏一体・哲学と科学のプロレスは、わたしが長年抱えていた科学哲学におけるわだかまりへの解として受け止めました。
※母校で科学哲学の権威が教鞭を執っていて、その授業が非常に有意義だったので、卒業後も個人的に追究したいという気持ちが存在。

 

はぁ、わたしもアイス・ナインでこの世を去りたい……。

 

カート・ヴォネガット全短篇が2018年に出ているので別作品も読みたいのですが、図書館の予約がマジモンの渋滞を起こしており、2021年になりそう。

 

お気に入り作家入りです。

 

9月の3冊

図説 ハプスブルク帝国

図説 ハプスブルク帝国 (ふくろうの本/世界の歴史)

図説 ハプスブルク帝国 (ふくろうの本/世界の歴史)

  • 作者:加藤雅彦
  • 発売日: 2018/05/11
  • メディア: 単行本
 

 自分から手にとった本ではないのですが、今の自分に必要な知識をズバリ埋めてくれた素晴らしい出会いでした。

 

というのも、もともと美術館や博物館は好きだったものの、理系だったので(これは教養ある理系人間に対する冒涜と己への言い訳を7文字にまとめた表現)世界史についてまったく知らず、解説を読んでもハァ?という無念経験があったのです。

 

とはいえド正面から山川と向き合うだけの気合もなく……という感じだったのですが、この本はハプスブルク家」という主人公の視点で歴史を眺められてスルッと入ってきました。オーストリア、めっちゃちっちゃくなってもうたやん……。

 

図説なので見てるだけでも楽しいです。シリーズの他本も気になる。

 

[図説]毒と毒殺の歴史 

[図説]毒と毒殺の歴史

[図説]毒と毒殺の歴史

 

 今回取り上げた本のなかで、1冊オススメしろと言われたらこれをチョイスします。

個人的に毒本というジャンルがあるのですが(『毒草を食べてみた (文春新書)』など)、そのなかでも決定版かと。

 

蛇毒からポロニウム210まで、歴史上メジャーな毒や印象的な毒について、由来や中毒時の症状、有名な毒殺事件を踏まえて図解&紹介しています。自分の推し毒を見つけよう!

 

ちなみに、中世くらいまではヨーロッパ泥沼列伝といった趣なのですが、近現代に入った瞬間にロシアロシアアンドロシア、恐怖のKGB、どうしてそこまでという怒涛の「おそロシア」体験を味わえます。


意外に日本の事件も大きく取り上げられており、サリン以外にもあの元素がピックアップされています。日本ではサリンほどのインパクトはなかったと思うのですが、海外の受け止め方は違ったのかも。

 

倫理学入門-アリストテレスから生殖技術、AIまで 

 犯罪心理学に続いて倫理学に入門していますが、こちらのほうがオススメ度というか、読んでほしい度が高いです。なぜなら、倫理学は広く浸透するほど有効な学問だと思われるので。

 

ざっくり分けると、前半が倫理学の説明(倫理と道徳の違い、社会契約論や義務倫理学といった歴史的な流れなど)、後半が倫理学の実践(医療倫理や環境倫理など)という2部構成。倫理学のベースをさらう前半(とくに第1章)が若干難しいですが、最低限の哲学史を知っていればついていけます……と思ったけど、Amazonレビューで難しいって書いてあるな?まあそういうときもある。

 

個人的には終盤で出てくる「星界人との対話」が最高なのですが、これは筆者の品川氏とわたしのユーモアセンスが一致したところによるものかと。しかし、倫理学とSFって謎の相性を見せるときがありますね。

 

番外編

幸福論 

アラン 幸福論 (岩波文庫)

アラン 幸福論 (岩波文庫)

 

 岩波青の古典を今更紹介するんかいという感じですが、最近「入門書→解説書→原典」という読み方をしていて(アホなのでそうしないとカントなんかわかんないよ)、そのなかで現状一番気が合ったのが楽観主義のアランでした。

 

「楽観主義とか気楽そうでいいよね」って感じですがこれが真逆で、悲観して被害者ぶってるほうが楽なんですよね。うるせー。しかも、アランは「つべこべいわずにまずは幸福を希求して行動せんかい」としつこく言ってくるので、説教されてる感というか、結構しんどみがある。

 

哲学書ではなく文学として読めること、3~4ページの哲学断章で成り立っていること、文章が美しいことからオススメです。個人的にはポケット聖書的な感じで日々手に取る本になりました。

 

 

 

10月は予約していたユヴァル・ノア・ハラリ本が一気にきて祭りになりそうですが、読み切れるだろうか……。図書館の予約は計画的に!

*1:作中に登場する架空の宗教

LIVE EXPRESS 2019 開幕記念式典

LIVE EXPRESS 2019 Delivery01&02 神戸お疲れさまでした。


単発ライブをいくつか挟みつつも、いわゆる「いつものスタイル」はLIVE ISLAND以来1年ぶり。
これは半年近く続けたFit Boxingの成果を見せる時!と意気込みましたが、超重量級のセトリで無様に散りました。毎日がんばったのに、こんなはずでは……。

 

以下、いつものとおり感想とかとかです。
神戸、ぎゅう〜。
 

 

 

予想できなくて悔しかった賞:WHAT YOU WANT(1曲目)

 


ライブ映えするから今回もやってほしいな〜ヘラヘラと思っていましたが(そりゃやるわな)、ムービーからの流れでexpress what you wantが完成するので、1曲目以上に適切な場所がないですね……。


Get my drift?やTricksterあたりとゴリゴリゾーンを組んでくると思ってましたが、Poison Lilyちゃんが早めにまた日の目を見て良かったですね。そして、Bring it on! とIt's in the bagを入れ替えるのはセンスが良すぎる。

 

 

配置が100点賞:Take a chance

 


実はあんまりライブで聞いた記憶がないんですが、こんなに映えるならもっとやってくれてよくってよ! 楽しい!!


配置に関しては、SUPER GENERATION/New Sensationの次に固定というのが良くて、長い間歌い続けたどちらの曲をも引き継げる歌詞だし、ダンス曲への接続としても完璧で、流れをうまくつくるポジションだと思いました。初日歓声が大きかったのも然り。


しかし、ショルキー背負った大平さんがセンターに出てくること自体がTake a chanceそのもので最高だった(割と世代)。

 

 

個人的リベンジ賞:Heartbeat

 


全体の爽やかさと、「僕らは夢でできている 永遠の旅人」のフレーズがお気に入りでずっと聞きたかったのですが、UNIONの時点ではツアーに通っておらず聞けなかったんですよね。後から気づいて後悔したパターン……なんと愚かな。
イントロで何が起きたのかわからず、通常3割増しで挙動不審に。


というか、調べたら本編がHeartbeat→フリースタイルって天才か……行きたかった……。UNIONとJOURNEYは千秋楽しか行っておらず、通っときゃ良かったポイントが結構あります。

 

 

うれしい! 心臓に悪い! 賞:企画コーナー全部

 

 

企画コーナーにはさまざまな思いがありますが、cherishとWhite lieは本当に良かったですね。DREAM SKIPPER全曲制覇がひとつの目標(?)ということもあり。2日目の「必要なものがあるんです」「ギャー!(頭を抱える)」は様式美。


個人的には、in a fixとそよ風に吹かれて…を回収できれば…...。チェリボコーラスのin a fix聞きたくないですか? サックスソロあるし頼む......季節外れとか言わずに......。


いずれにせよ、初参加がGAMES(2010年)な以上ライブで聞いたことがない曲しかまず来ないので、何が来てもありがたく拝聴する次第です。

 

そして、できればメイキングのおまけではなく普通に収録してほしい! 毎回言ってるけど!! だって次また10年とかかかったら......!!!

あと、ADVENTUREの砂漠の海のデータは言い値で買うので。まだ根に持っているので。本当に。

 


最優秀賞:What cheer? / POWER GATE

 

2曲で合わせ技みたいなところがあり、「最」優秀とは……。


What cheer?は本編最初なのが決め手ですね。神戸2日間参加してみて、「届ける」「伝える」みたいな直球のキーワードは含まれていないものの、セットリストや企画やコンセプトに一番合ってるのでは?と感じました。
ツアータイトルが発表になったとき、ISLANDと比べると「奈々ちゃんが観客に」色が強いなと思ったんです。でも、「LIVE EXPRESS、発送します!」からお出しされたのは「素顔に戻ろう 燃え尽きよう」「今夜はじまる この瞬間忘れない」と完全に双方向で、やっぱり届けて届けられてのEXPRESSだし、喰らえこの愛!だよねと。同時に、どんなに子鹿っても笑顔で跳ぼうと思いました。

 

POWER GATEは常に最高であり、GAMES以降も継続してライブに行こうと思えたのはPOWER GATEのおかげであり、POWER GATEのためにライブに行っているところがありますが、ETERNAL BLAZEあり、New Sensationあり、suddenlyあり、SUPER GENERATIONありという状況だと外れてもやむなしという気持ちも正直あります。
が、今回は新旧織り交ぜた「私の考えた最強のセットリスト」状態でして、ならば締めはやっぱりPOWER GATEでいてほしいんですよね。


あと、これはツアーが終わってみないとわかりませんが、EXPRESSってつまるところ奈々ちゃんのライフワークでは?という印象があり、表現して伝えることで時代とか変えてきた人だと思っているので……。

 

 


おまけ:コンセプトとか演出まわりとか

 

 


正直、ZIPANGUやISLAND的なストーリーはまだ見えてなくて、盛り込みたいこと先行かなと思ってるんですが、やっぱりツアータイトルが強いですよね。温めていたタイトルのひとつなのではとも思います。今回はシンフォギアXVとの兼ね合いもあるので、作品テーマ的に近いものもあるかと。

 

ブリッジムービーでは、奈々ちゃんが見つけた未知のパワーで普通の車が瞬時に巨大トラックになってますが(免許大丈夫なのかなアレ)、車の積載量って要するに届けられるもの(=音楽)の数だったり、届け先(=観客)の数だったりな訳なので、まあ現実的には積み重ねで増えてきたものだよなとは思います。
なんでもできる不思議な力は存在しないので、結局努力を重ねるしかないんですよね。逆算にはなりますが、それが冒頭のムービーなのかなと。たくさんある荷物のなかで、ひとつだけパンダのぬいぐるみにして明確に区別させているのは、「ひとりひとりに大切に」を強調し、「笑顔と感謝の気持ちを届ける」シーンをつくるためだと受け取りました(たしか口パクでありがとうございましたって言ってたはず……)。


あと、配送センターのシーンが厚かったのは、届けるまでの準備にもいろいろな人の手を借りていることの表現かなと考えてます。
そういう意味だと、本当は、配送センターを出発した時点でツアータイトルをコールしても成立するんですよねー。それだとマイケルのキャラが立たないんですが。マイケルのキャラとは。
LIVE EXPRESSはラジオでもあり宅配便でもあるという二重構造はやや不思議に思えますが、基本的には宅配便と捉えていいかなと思います。発送します!と言っていることだし。ただ、宅配便だと1回ポッキリですが、ラジオだとドライバーに寄り添う文脈があるのはいいなと思いました。あなたのおそばに的な。


いずれにせよ、カット自体をだいぶ被せてることからも、キャロルに決まったのは相当うれしかったのだなというのは伝わってきました! あのエネルギー注入シーンの顔まで模倣されたらどうしようかなと思ったけど……それはそれで見たい。

 

あと、別軸だとチェリボ・YO-DAコーナー共に完全生放送?になったのは良い判断だと思いました。ムービーでもいいですが、ライブならではのものを届ける・表現するという方針がコンセプトに合っていて好ましいです。ただ、毎回変えるのも大変だろうな〜。

 

 

......ということで、来週は福岡! よく食べ、よく燃え尽きる夏が始まります!!

 

アニセミ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』アニメメイキングセミナー お疲れさまでした。

参加された皆さま、お疲れさまでした。紛うことなき神イベでしたね。
このイベント、もっと他の作品でもやってほしいなあ。監督と美術さんとか(どろろでPablo呼ぶとか良くない?)、セクション掛け合わせる形のイベントということで。


長丁場でしたので例によって精度はアレなのと、発言はかなり丸めてあるので何卒お願いします。見出しの都合で、実際の資料や説明の流れとは違うところもあります。
あと、堅苦しい話をしたように見えたらすみません。お三方とも楽しくゆるく、締めるとこはちゃんと締めるトーク力だったのでとても盛り上がったのです。もっとやって!!!

 


第1部:監督・演出


監督はご自身が使っていた第1話のコンテを持参。ミスターホワイトが描かれている表紙は監督オリジナル。ちなみにめちゃくちゃ付箋が貼ってあり、使い込まれっぷりが伺えます。


プリプロダクション:キャラクター設定


・監督が一番心がけたのは、「キャラをキャッチする(してもらう)こと」。とにかくお客さんに9人の舞台少女を受け取ってもらいたい!キャラを愛してほしい!という気持ちで作っていた。ストーリーやテーマはその後。


・舞台との二層展開式なのが特徴で、舞台版はアニメ3話までの脚本を渡してから作ってもらっている。
舞台は、70分のなかで一番キャラが際立つ形に組み直してもらっていることが特徴(=アニメ版と舞台版は並行して作業している)。舞台が先行したことで、アニメに反映されたものも多い。


・インタビュー等でもよく言っているが、「歌ものではなく演劇だと"突っ張る"」ことがオリジナルコンテンツとして大事なことだった。
歌ものというだけだと他のコンテンツと差別化できなくなってしまうので、ボケないようにとにかく舞台に紐付けた。


プリプロダクション:キャラクターコンセプト


・タイトルの初期案は『きらめきのレヴュー★アルテミス』。ロゴはヅカっぽいネオンパネル調で今とだいぶ違う雰囲気。ただし、舞台モノであることや、ネルケプランニングとの二層展開式であることは当初から決まっていた。


・「愛城華恋」というキャラクターの名前は最初期から設定があった。名前は樋口さんがつけており、並行して文章ベースでのキャラクター設定も作成されていた。ちなみに、最初~最終稿まで華恋の名前は変化なし。
・ただし、華恋の最初のキーキャッチは『私がなんとかしてあげる!』。当初はおせっかいな主人公キャラという想定だった。


・このキーキャッチは、あくまで樋口さんが作成した叩き案。「最初から詰め切らないことが大事」と考えている古川さんにとって、最初にテンプレート的なキャラ案をつくってくれる樋口さんにはとても助けられた。
・最終的に『スタァライトしちゃいます!』というキーキャッチが出てきたことには、最高の一言。キッズものも手がけられている樋口さんの強みが出たのかも。


・小出さんは、最初は古川さんが欲しいものを見極めようと、いろんなボールを投げてくれた(非常に速筆なこともあり、大量に描いてくださったとのこと)。
・小出さんの初期案は、意図的に振れ幅を持ってデザインされていたが、古川さんとしては、キャラクターには共感性と一般性が大事だと考えていた。そのため、絵柄自体にパワーがあることよりも、キャラの感情に共感してもらいやすいデザインであることを重視して最終案に着地した。


・古川さんが作成した華恋の表情設定用メモでは、比較的テンプレっぽい表情が多い(ただし、メモの文末にいちいち(カワイイ)と書いてある)。


・キャラ設定も、中期案になってくると今の形に近づいてくる。ただし、この時点ではクロディーヌはおらず、代わりに『かのん』というロリキャラがいた。また、香子の名前も『しのぶ』になっている。
※中期案の絵は、キャストオーデのときに絵がなかったので斎田さんが描いたもの。最終版よりもやや幼い印象だが、斎田さんの特徴であるシャープさは感じられる。


・実は、クロディーヌは真矢との"疑似姉妹"をつくろうとしてできたキャラ。
真矢クロは属性が被っているのだが、そういった場合は似ていること自体を個性にしてしまう(例:セラムンのうさみな)。2人に同じ動きをさせて対比・対立させるのがおもしろいという考えから、クロディーヌというキャラクターが生まれた。
……というように2人組をつくっていったところ、最後にまひるが残ってしまった……。
・古川さん「ただ、僕は箱推しなので!!!」

 


こぼれ話1:ばななサイドテール事件


古川さんはじめスタッフは「ばななはツインテじゃないとダメだ!」派が多かったが、ばななのポジションを鑑みると、ぽやっとしたビジュアルで良いのか…という大人のご指摘があり、サイドテールばななも案としては存在した(たしかに、ややキリっとしてみえる)。
ただし、ばななは「普通の願いを持つ普通の女の子である」ことに意味があると考えていた古川さんは、ツインテール案で押し通した。

 


こぼれ話2:そもそもなぜスタァライトの監督を引き受けたのか?


実は、ブシロードコンテンツであること自体が面白いと思って引き受けたところがある。
作品自体はミルキィホームズ以外見たことがなく(ミルキィはお好きだった模様)、自分から遠いところにある作品群だった。今まで一緒に作業してきた幾原監督とは違う畑でやってみるのもいいなと思ったし、逆にブシロード作品で演出に力を入れるのも新鮮ではないか…と考えて引き受けたとのこと。

また、多くの人に見てもらいやすいパブリシティの強さを持ち、かつイベント等でリアルと接点があるのもいい。


プリプロダクション:衣装


ブシロードからは、「舞台モノで、9人で、カワイイよりかっこいい寄り。舞台映え重視!」というオーダー。
・舞台に映えてかっこいい衣装なら軍服かな…と思いつつ、歴史っ子だった古川さんは、今までアニメでやっていないであろうユサールに目をつけた。
「(マントが)片側についてるってザクだよね!!!」とスタッフに熱弁したとのこと。


・この片側マントは単純な衣装デザインに留まらず、「スタァライトってどういうコンテンツ?」と聞かれたときに説明しやすいように、という狙いもあった。
コンテンツを説明するときに「片側マント」「キリン」というように、一言で言い表せないオリジナルコンテンツは弱いと考えている。
・また、舞台映えする衣装はコスプレしてもらいやすい衣装でもある。SNSで落書きやコスプレをアップしてもらうことは、宣伝効果を考えると超重要。
SNSでパッと見た時に、人は「(完全に新しいものではなく)見たことがあるけどちょっと違うもの」でないとキャッチしづらい。そういう意味でも、リアルと地続きな軍服は優れていた。
この「入ってきやすいけどちょっと違う」ことは、一般性を獲得するためでもある。


スタァライトでは、衣装をシルエットという側面でも検討しているのが特徴的。
それは、古川さんが「キャラクターのイメージはアウトラインで決まる」と考えていることに加えて、「シルエットで作らないとディティールの勝負になってしまい、作り込み=スタッフの力量次第になってしまうから」という理由がある。
・さらに、シルエットが良いと、多少作画の力を抜いたりロングにしてもキャラクターを判別しやすい。このあたりはスタジオによっても考え方がちがうが、古川さんとしてはクオリティコントロールの一環であると考えている。「最低ラインを守る(守りやすい状態を作る)」ことで、現場の力が100%でないときでも、スタァライトであることをキープできる
・古川さん「やっぱり美少女もので(顔の)作画が崩れたら悲しいじゃん!!!」


・武器に関しては、舞台との兼ね合いもあるため、立ち回りができて現実ベースになるように意識してデザイン。あまり凝りすぎると武器=キャラクターになってしまいかねないため、良い意味で凝りすぎないようにしているそう。

 

・キャラクターの持っている小物類の設定をつくってもらうために、キネマシトラス内でかわいいイラストをいろいろ描かれていた谷さんを指名。
・小物類は、一度つくっておけば設定を後付できる(◯◯からもらったもの等)ので便利。二次創作も捗る!

 

・私服の初期案では、華恋はもっとモガっぽい感じだった(赤と黄色のツートンワンピース)。
・しかし、小出さんの名言「オタクは自分の範囲内でないおしゃれは受け付けない!」で現在の案に(これも一般性の一種)。
・私服ではないが、レオタードは画面内に対比物をつくるという目的で、真矢クロだけ別物にしている。

  

・キリンについては、ブシロードからは「グッズ化するときに生キリンだとやりづらい……」とオーダーが入ったが、古川さんは断然生キリン推し。ネクタイをつける案などもあったが、生キリンのほうが面白いし、(動物園に?)会いに行ける。苦肉の策である「しっぽにリボン」でなんとか説得して、今のキリンに着地。わかります。


キャッチワード


キャラを作るにはワードが必要。「This is 天堂真矢」は単純な1文だけど、なんとなく言いたくなるし、それだけでごっこ遊びができる。また、ツイートのしやすさ(ワンワードでツイートできるかどうか)を意識すると、アニメの共体験である実況文化圏でひとつ強みができる(トレンド入りもしやすいし!)。
・ただし、これはブシロードコンテンツであることや、キャラモノであるからやったこと。ストーリー重視の作品だったらやらなかったはず……とのこと。


・このあたりの仕事は、監督ではなくプロデューサーの業務領域ではないか、という指摘も(今回は司会の方から)あるが、古川さんとしては、監督の仕事に領域はないと考えている。
そもそも、ご自身が語呂で遊ぶことが好きだし、一緒に作業していた幾原監督も普通の監督ではなかった。どちらかというとプロデュース領域でとくに強みを発揮するため、その影響を強く受けているのでは。ただ、古川さんはより「自分で手を動かす」ほうに近いという違いはある。

  

こぼれ話3:アニメの肌色問題


・アニメで肌色が出てくると「肌色だ!」となってすべてが吹き飛んでしまう古川さん
・ご自分でコンテを描いたが、実際に放映されたお風呂シーンでビビる小出さん

 

 キャストとキャラクターの相互反映:調査シート


・キャラクター造形にあたって、キャストに聞き取り調査をした(科目や食べ物の好き嫌い、その他)。これは古川さんも樋口さんも、キャストに自分のキャラだと思ってほしいという意図もあった。
・本来こういった調査は難しいが、舞台のゲネプロ等でキャストが集まる機会があったため、ブシロードのPに聞いてもらえてラッキーだった。
・小泉さんのカエル好きなどはそのままキャラクターに引き継がれているが、主人公である華恋は意図的に外しているところがある。華恋は感情やストーリーの担い手なので、ディティールをつけすぎると本筋からずれるため(ただし、作っている方は楽しい)。


プリプロダクション:コンセプトと世界観


わかりやすいこと、視聴者と同じ地平であること、見たことがない発明であること、の3つが柱。


・「なぜ塔なのか?」を記したビジュアルメモを引用。必要なときに立ち戻るための資料を作りたかったが、意図的にあまり絵をかかないようにしていたため文章で作成。

※監督が描くとそれがスタッフ間での「正解」になりがちなため。


・東京タワーはすでにキャラクターであることや、だいぶ寸法が違っても、特徴を押さえておけば東京タワーだと思ってもらえるメリットがある。
・東京タワーの下にある白いタワーは「定点」として設定。スタァライトでは、レヴューの演目ごとに舞台セットが変わってしまう(舞台が共通であることがややわかりづらくなる)ので、変わらない定点として白い塔を置いた。
・ちなみに、見本は池袋の焼却炉とのこと(古川さんは学生時代大塚に縁あり)。3Dで作成しているが、白い多面体なので、シャドウをバキッとつけたり、スポットライトの効果が出やすいというメリットも。

 


プリプロダクション:舞台案


・第1話では、演劇セット内で戦い演じることを伝える必要がある。そんなときに出てきたのが、プロセニアムアーチを置く案。
・ポイントは、アーチが立体ではなく平面であること。舞台っぽさを出すために、Pabloには「本物の布ではなく、木の板に布を描いている」という発注をしている。

 
スタァライトの舞台には新たな発明が必要!ということで編み出されたのが、3D照明。
・もともと、照明が入る位置に(印になる)棒さえ描いておけば、撮影処理で後からなんとかなることはわかっていた(全部作画でやるのは大変すぎて無理)。通常、ライブシーンなどではダンスにお金を割くことが多く、ライトの動きは単純であることがほとんど。一方、スタァライトは演劇なので、ライトとそれが当たるキャラクターを大事にしたかった。
・ちなみに、3D照明はポリゴンの棒を動かしてもらっている。3D照明の映像がPVに間に合ったことで、期待値を上げられたのが良かった。


・最終回の砂漠のイメージボードは、古川さんご自身が作成。
・砂漠自体は現実に存在するが、ピンクだったり、空が夜でも昼でもない色をしているなど、見たことがあるのに新しく、この世ならざるもの感を出せたのでは。
また、ここでも定点である塔を出すことで、舞台の一部であることも示唆し、新しさと連続性を出している。
奥に倒れている東京タワーは2人の約束を示しており、2人の夢が死んでいることを象徴している。


プリプロダクション:絵コンテ


絵コンテとは、設計図ではなく地図であると考える古川さん。
・設計図だと、スタッフが共有する図面という印象だが、キャラクターやテーマをお客さんに伝える・届けるためにどういうルートを通ればいいのかを指示するものと考えている。


・第1話のレヴューシーンは、一度描いた絵コンテを物理的に切り貼りして作成された。もともと、第1話ではレヴューを1から開発をする必要があるため、必要な要素を書き出して切り貼り・シャッフルを繰り返した。
※実際にコンテコピーを持ち込み、ハサミとテープで切り貼りされてました。

・比較的珍しいやり方だと言われるが、作業するスペースを物理的に広げると、引きで、かつ多人数で同時に見ることができる。感情の流れも整理しやすいので非常にやりやすかった。
ユリ熊嵐の作業中も、幾原監督とボードにいろいろ貼りながら「作ってる感あるな~!」と言い合っていた(それと実際の進捗は別問題)。

 
・いわゆるコンテ撮ではなく、Toon Boomというソフトを使用してコンテムービーも作成。音楽チーム含むスタッフにテンション感を共有することが目的。新ソフトを導入することで新しい発見があるかも!と思ったが…ただ、尺もわかるのは便利だったとのこと。


・第1話で東京タワーから落下する華恋のシーン。本体はなくても成立するが、Aパートで「このアニメは何か違うな」と思われることをしたいと考えて入れることに。また、Bパートで華恋は自ら望んで落下していくので、それとの対比をつける意味でも。
・27秒という非常に長い尺だが、長いからこそ特殊な印象を与えられるうえ、他のシーンと比べたときに音楽的なメリハリもつけやすい。


ストーリーではなくキャラを立てる・届けるためにすべてやってきた古川さんの気持ちは「箱で推して!」とのこと。

 


古川さんからのメッセージ(だいぶ意訳)


アニメ制作(もっというとクリエイティブな仕事)では、自分の人生から捨てることになるものも多い。モテない儲からない未来が見えない
が、アニメであればフィルムは残る。
12年間アニメ業界で仕事をしてきたが、5年くらいで自分の才能が見えてきて、スタァライトを作っていくなかで自分が何者かがわかり、そしてフィルムが作りたいんだということに気がついた。業界12年の間で、後悔した仕事はない。失敗したことがあっても、それはスタァライトに生かせたから。
人生の全部一部を捨ててでも、後悔しないために自分はフィルムを手放さない。

 

 

 
質疑応答


Q:衣装デザインがアニメと舞台で違うのはなぜ?
A:舞台用は舞台に映えるように変えている(柄を入れるなど)。


Q:スタァライトを作るにあたり、インスピレーションを受けた作品は?
A:自分の人生! 実際に、自分だったらこう言われたかった、こういう人がいてほしかったという経験が盛り込まれている。これは古川さんに限ったことではなく、一般的に10代までに通過したであろう気持ちをキャラに入れ込んでいる。


Q:最近、作品の評判を聞いてからまとめて見るという視聴スタイルが増えていますが?
A:作り手も…というか、ブシロードが強く意識しており、それが一挙放送につながっている。
とくに、ログインの必要がないYouTube以外(のプラットフォーム)は考えられない。一挙放送はすべての作品でできるわけではないが、強力なバックアップになった。


Q:オーディションに負け、きらめきを失ったひかり。普通はどうなる? 舞台に立てなくなる?
A:舞台には立てなくなるかも。ただし、華恋のようにあきらめなかった子や、別の道に行った子がいたかもしれない。気になるので、二次創作でぜひ!


Q:『世界を灰にするまで』は戯曲スタァライトが原典なのか?
A:全てのレヴューは戯曲スタァライトの各章であり戯曲の一部。『恋の魔球』などは古典とは思えないかもしれないが、それ自体は問題ない。なぜなら、全てのレヴューは、各キャラクターの現代アレンジであり、再解釈であり、再演であるから。

 

 


第2部 映像と音楽制作

 

 


スタァライトの音楽とは


・歌劇であること、二層展開式であること、レヴュー曲がフィルムスコアリングであること、作曲家2名体制であることなどが特徴的。
・フィルムスコアリングはアニメに限った手法ではないが、スタァライトでは絵の尺に沿って音を当てていく方法が取られ、とくにレヴュー曲においてその特性を発揮した。
・演出の立場からすると、コンテを早めに上げたり、どの話数で何をするかを決め込む必要があるため、スケジュール感が難しいという一面も。ただ、音楽チームは厳しい進行のなかでも最高のものを上げてくれた。

 


レヴュー曲と劇伴


・古川さんにとっては、初監督・初音楽発注。ブシロード10周年祭用PVの音楽のオーダーは「フィリップ・グラスで」。リフレインするところや清潔感が、演劇学校の特殊性を表現できるのではないかという意図だった。
・山田さん含め音楽チームは、舞台が始まる前の脚本打ち合わせに呼ばれていたが、その時点ではあまり情報がなかった。かなり早い段階での招集になったのは、楽曲面での作品の引っ掛かりづくりを作曲家の皆さんにお願いしたかったという面も。


・古川さんにとってラッキーだったのは、一緒に作業をしていた幾原監督が東映出身だったこと。東映では演出と音響を兼ねるので、輪るピングドラムの制作時に根掘り葉掘り幾原監督に聞いていたことが役立った。

たとえば、ストーリーの中心におけるようなテーマ曲を作っておくと良い、などなど。普通、「学校」「日常」「緊張感」といったシーンでのオーダーになるが、そういったオーダーでは"いつもの感じ"になってしまうことも多い。古川さんはキャラクターや脚本を起点にして発注しつつ、足りない部分は音響監督の山田(陽)さんにカバーしてもらっていた。監督が音響にまで携わるのは比較的珍しいが、画を音楽でカバーできることもあり、音楽との関わりは強く持ちたかったとのこと。

 


スタァライトの作詞(中村さん)


スタァライトでは楽曲の作詞や戯曲の脚本を手がけた中村さん。普段はポップスやアニソンの作詞でも活躍されているが、それぞれ取り組み方が異なる。
ポップス:人間が歌うので、世界観を作り上げることよりも、歌う人を出発点にする。
アニソン:世界観を一緒に作ったり、キャラクターを補強できるようにする。
・通常、キャラソンやOP/EDは、脚本やキャラクター設定をもらって作詞する。対面の打ち合わせはほぼなく、メールのみでのやりとりが多い。
・一方で、スタァライトではキャラクターや戯曲、レヴューを作るために脚本会議に参加。しかも、会議の内容を把握するだけではなく、キネマシトラスの小笠原さんから意見を聞かれることも多かった。戯曲をつくることになったのも、小笠原さんによる「中村さん、絵本かいてたよね?続きいってみよう!」という一声がきっかけ。
・振り返ってみると、脚本会議に出たことで、非常に大きい影響があった。今までは、出来上がった文字や絵が来るだけだったが、作品が形作られていく過程をリアルに見られたことで、背景や過程をたくさん蓄積できた。


OP「星のダイアローグ」の作曲(山田さん)


・通常OP/EDはコンペ方式だが、舞台版の曲も手がけていた本多さんが作品の世界観を一番理解してくれているということで指名発注した。ただし、いつもは音源として渡す参考曲を、打ち合わせで一度しか聞かせず(追って補足はしている)。今までと違うことをやらねばならない作品だったので、できあがっているものにあまり引っ張られたくないという意図があった。
・ただし、補足の内容がまたなかなか厳しい。作品自体の情報に加え、テンポ感、大会場で公演する可能性、舞台モノとしてのドラマチックさなどなど。とくに、「声優アイドル曲ではなく、ミュージカルを書いたら90秒だった的な偶発感」は、決め込むのではなく、プロがうっかりつくっちゃった的な音楽が欲しかったとのこと。


・上がってきた楽曲への戻しはいくつかあったが、そのなかのひとつがBメロを変拍子にしたこと。結果的に、サビの前で「アタシ再生産」を出すタイミングが生まれた。OP曲を受け取った古川さんは、小出さんたちと「どうしよう!?」となったが、とにかくやる気が出たことを覚えている。


レヴュー曲『世界を灰にするまで』(山田さん/中村さん)


・作曲としては、キープしておいた舞台用のデモが形になった曲。スタァライトという作品のゴールを古川さんのほうで模索していた時期でもあり、通常3~5回の出し戻しで済むところ、20回(1ヶ月)ほどやりとりがあった。
・作詞としては、いわゆる挿入歌ではなく、舞台装置やセリフと地続きであることを意識して作成。作業はコンテムービーをベースに行っている。画面に写っている人と歌っている人を一致させる、セリフの内容と曲をシンクロさせる、キャラの変化に歌詞が追従しなければならないなど、OPと同じ作り方にはできなかった。さらに、レヴュー曲は戯曲スタァライトの一部でもあるため、非常に制約が多い中での作詞になった。
・こういった制約はオーダーされたことではなかったが、それを実現できたらすごいだろうな、という気持ちで取り組んだ結果が成果として表れた。

 


BANK曲(山田さん)


・古川さんから「レッド・ツェッペリンの『移民の歌』を参考にしてください!」というオーダーが入り、作曲家の加藤さんはビックリしたものと見られる。その後、レッド・ツェッペリンからの連想ゲームを経て、かつ「女性の声を楽器として使いたい」という古川さんの要望も詰め込んだ形で完成。
・ちなみにBANKは曲先行。曲が上がってきたとき、山田(陽)さんやPから(このBANK曲で大丈夫かどうか)心配する声も上がったが、最高のものが上がってきた古川さんが説得した。


レヴュー曲『RE:CREATE』(山田さん/中村さん)


・作曲としては、長尺なので飽きさせない展開が必要だった。
・作詞としては、8話まで来るとレヴューの作詞にも慣れてきて、歌劇に近づけるために歌い継ぎややりとりをより意識していた。RE:CREATEは、思わず泣いてしまうほど最高の曲が来たので、とくに思いが乗った。実際の歌詞としては、第2幕に変わる「開くわ」が最初に嵌ったところ。「作曲した側も、この4文字は開くわだと思って作曲しているはず!」という思いで、その前後を広げていった。


・8話の時点では、かなり制作スケジュールが厳しい状態にあった。しかし、最高の曲と最高の画面を見てもうひと押ししたくなった古川さんから樋口さんとデザイナーさんに即電話が入り、「第2幕」のテロップが入ることになった。V編会場でPを待たせていても入れなければいけないテロップがある。結果的に、できあがった映像を見た光田さんが感動してくれたのも良かった。
・ちなみに、8話レヴューで起きた波でキリンが溺れる(セリフがゴボゴボになる)説があったが、感動的なシーンが台無しになるのでボツに。


こぼれ話4:セリフが歌になったシーン


・3話レヴュー曲の『より高く、より輝く』は、もともとセリフにするか歌にするか迷っていたところだった。しかし、「『だからこそ私は』というセリフから『より高く、より輝く』という歌に繋げるのがミュージカルらしい」と考えた中村さんにより、ここはセリフではなく歌に決まった。

 
こぼれ話5:大ボリュームの生オケという贅沢


スタァライトの生オケは、弦楽器で24人とかなりのボリューム。普段は辛口の山田(陽)さんも、スタァライトの打ち上げでは楽曲からオーケストレーションからべた褒めだったとのこと。


まとめ:作詞とは(中村さん)


眼の前にいる人を感動させないと、遠くにいる人は感動させられない。また、自分で感動できないものは、眼の前にいる人を感動させられない。自分で作ったものにも自分で感動しながら作詞をしていくことが大事。
※古川さんも、「面白いコンテを描いてしまった……」となる時がある模様。

 


まとめ:監督からみた音楽チーム

・古川さんとしては、チームにももちろん恵まれたが、舞台先行だったことや、すでに舞台版の曲があったことなど、非常にラッキーなことが多かった。各セクションとキャッチボールのたびに高め合ってきたが、キャラを届けることに全セクションが全力を注げたことが結果につながった。

 


質疑応答


Q:『星々の絆』のラテン語はどういう意味?
A:小泉さんから録音当日に提案され、コーラスで入れることを決めた(小泉さんは元コーラス部でラテン語を歌う経験があった)。そのため歌詞にはないが、女神というキーワードは入っている。
ちなみに、レヴューシーンは演じる人を(2人なら2人)集めて一緒に撮っていた。うまく歌うことよりも感情を乗せることを優先してもらっていたが、今度は涙もろい人(小泉さん相羽さんなど)が我慢しなくてはならないことに……。


Q:2話と10話のレヴュー曲は舞台版アレンジ。なぜここで?
A:2話は舞台版との連動感を演出するため。10話の『Star Divine』は使う予定ではなかったが、監督が(『舞台少女心得』と合わせて)マストだということで使用。
中村さんいわく『Star Divine』の2番は、レヴュー曲がないクロディーヌのために(舞台版から?)差し替えられている。
また、クロディーヌは名乗りも脚本上ではなかったが、後から付け足された。3D照明の神谷さんにも盛ってもらえて、結果的には良い口上に。


Q:舞台版の先生は、アニメになぜいないのか?
A:たしかに先生のキャラは強いが、アニメでは9人の舞台少女を描くことが目的だったから。
ちなみに、椎名へきるさんにお会いした古川さんは「レイアースだ!!!」と思ったとのこと。


Q:スタリラの展開は当初から想定されていた?
A:プロジェクトとしては視野に入っていた。


Q:クオリティコントロールにおいて、チームで死守すべきラインとは?
A:キャラの感情がお客さんに届くか、寄り添われるキャラになっているかどうか。とくに印象的なシーンでは、動きがどうこうではなく、お客さんが見たいキャラが描けているかどうかが大事。やたらめったら頑張るのではなく、頑張りどころを絞り込む
幾原監督は、その技術がとても高い。どうしても、作品のテーマ性やご本人の目線など作家的なところがクローズアップされがちだが、枚数に頼れない東映出身ということもあり、音楽などでいかに盛り上げるかという技術が一番すごい。作画や美術に頼らないのは、古川さんご自身がやりたかった作り方。それを目の前でされたので、一緒に作業をしながらそれを全部盗んだ。幾原監督と出会ったのは29歳のときだったが、今は、それまでの経験と、幾原監督から得たものを結びつけて作品を作っていっているところ。


Q:(中村さんに)作詞家が脚本を担当されるって意外ですよね?
A:キネマシトラスの小笠原さんが「歌詞も書いてるし、(戯曲も)書けるんじゃない?」と仰ったのがきっかけ。もともと、戯曲づくりは脚本会議などに出た実績がないと厳しいが、全話脚本を担当される樋口さんには難しい状況だった。そのため、中村さんがチャレンジすることに。
一部ボツになったアイデアなどは、スタリラに生かされているらしい。

10SKIN GEIDAI ANIMATION幾原監督トークショーお疲れさまでした

3/3の10SKIN GEIDAI ANIMATIONのトークイベントお疲れさまでした~。
大量のお蔵出しに新公開情報満載で、「聞いた話ばっかりなのかな~」と踏んでいた私は死んだ。

60分と長丁場だったこともあり、自分用にサマりました。その分ニュアンスが死んでいるので、あくまで参考程度で……。

下記のほかにも社内稟議用プレゼンの話なり、スポンサーとの付き合い方など新鮮な話が多かったのですが、そのへんはなんかアレな気配がしたのでカットしました!!!!

※2019/03/04 1:11に一部修正しました。


●前提とお断り


・すべて、段階は違えど企画書ベースに話が進んでいます。
・記憶の範疇にはなりますが、別資料に記載があるものや別イベントで言及されたものは(ほぼ)入れていません。

 


●アリスドラム&ピングドラム

・星野先生とは、2007年ごろに別企画で接触
・当初は原作付きの予定が、時が流れてオリジナル企画に変更。
・オリジナル企画も何度か変更されている。
・SFロボ(アリスドラム)の前にはボーイ・ミーツ・ガールモノだった。

・SFロボからペンギンになったのは「(動物が)得意分野」だから。
・星野先生の描いたプリクリ絵を起点に企画が進んでいった。
・プレゼン時もペンギンの可愛さ押しで通ったらしい。

・ピングは、ウテナ以降に監督がためていた(ボツ含む)企画がミックスされてできたもの。
・以前から「地下鉄もの」「ストーカーもの」という企画は存在していた。
・共感性よりも「意識の高さ」「かしこさ」を優先してしまっていた反省がいかされている。

・一緒に仕事をする人には「三歩進んで二歩下がる」ことをよく言っている。
・最初にいいなと思ったディティールなども、結局大部分を捨てることになるので、その徒労感に耐えられる人でないと厳しい。
・同じく、「トラブルを恐れると作品は作れない」とも言っている。


ユリ熊嵐

・「ユリ熊嵐」はプロデューサーと酒の席で出たタイトルで、初期から変わっていない
・当初は、それぞれ別の能力を持つ5人のクマの女の子の話だった模様。

ユリ熊嵐では「森島先生の世界」を借りている。先生以外にもクリエイターからいろいろなものを借りているが、すべて「自分が惚れていること」が大事。
・アニメーション制作は期間が長いため、飽きないことが条件なのでは。
・同じく、酒の席で出た企画が面白いと思っているが、それも飽きなければの話。ゴールすることが大切なので。

・タスク(目的)は常に変わっていく。
・若い頃は表現することが大事だが、ライフステージの変化などによりそうもいかなくなってくる。
・そうなったときは、(今の環境から?)距離を置いてみる。
・過去にできたことが、今できるとはかぎらない。

・(司会から売れ線の作品を作るかと聞かれて)「そりゃあ作りたいですよ!」
・周囲から「売れるように」作ってと言われることもあるが、どうも避けがち。
・外的要因を主体にして作品をつくると(例:人気漫画家などをフィーチャーするなど)、後から揺さぶられてしまうことが多いので。

 

<自分用のおまけ:ユリ熊初期の企画書にあるけど変更されている設定>

・銀子は「トゥルー・ベアー!」と叫ぶと変身する。
・銀子の首にはクマのタトゥーがあった。
・るるの名字が「雨野(るる)」
・妄想癖のあるコスプレイヤーで「るるのラブシアターを展開する」(これは既出かも)
・ユリ熊の未決定版キャッチコピー
>私達は「クマ」!
>それは誰にも言えない秘密。
>でも、私たちは旅立ちます!
・銀子の変身後と思われる「プリンセス・ハニー・デラックス」
・PHDの説明の一部「お前たちはきっと、熊嵐に喰われるだろう」
・ジャッジメンズはほぼビジュアルに変更がないが、ライフ〇〇ではなく、ベア◯◯
・クールとビューティーはそのままだが、セクシーではなくダンディー。決め台詞は「Lily, do it!」
※初期案は価値を共有するための企画書とのこと


●さらざんまい

・(司会から皿は放映されるんですよね?と聞かれて)「…ねぇ?」
※と言いつつ、ホンとアフレコは終わっているので、ストーリーの変更はもう(でき)ない模様。

・皿は「日本のローカル企画」が出発点。
・浅草になったのは、実際に行って、吾妻橋隅田川スカイツリーや雷門などをみて、モダンなものと古いものが共存し、それを過渡期として同じフレームに収められるのがいいなと思ったから。

・「つながる」という題材自体は、そんなに目新しいものではない。
・むしろ行為自体は日常において当然のものになってきている。
・しかし、その意味や、その後どこにいくのか、どうなっていくのかというところを描いていきたい。

・アリスドラム~さらまで、初期の企画書のイラストはほぼモノクロで発注(白黒という意味ではない)。
・それは、重要な要素である色を自分ですべて考えたいからとのこと。


●アニメーションとクリエイターのこれから

・メディアの形が劇的に変化していて、それはこれからも加速する。そのため、正直なところよくわからない。
・ただ、アマプロのボーダレス化が進むのではないか。観客にとっても、対象がアマかプロかは関係のないことなので。

・それよりも、面白いものをつくることを重視していきたい。
・また、10年後見ても面白いと思えるものに自分は関わっていきたい。
・ただ、自分の仕事はエンタメなので、「これしかやらない」という狭め方はしないほうがいいと考えている。

 

●質疑応答

Q:長いアニメーション期間中に、時代が変わってしまったことはないのか?
A:皿もそうだが、変化のスピードが早いぶん、古くなっていないかは注意している。
一度、軽い気持ちで取り入れたディティールが改めて見ると非常に重みを持っていたことがある。
古いと言われないように、今何が時代に合っているのかは常に意識している。

また、若い頃の作品が自分を変えてくれた経験があるので、若い人に向けて作っている。
長い間応援してくれるファンも、変わらず楽しんでくれるのでありがたい。


Q:音楽へのこだわりは?
A:一般的には共感性を獲得するためのもの。
ただ、自分自身は誰もやっていないことや、好きな音楽を使い続けている。
ここぞというときは、自分の得意球で勝負したいので。

LIVE GRACE 2019 opus3 かってに授賞式

6年ぶりのフルオーケストラライブとなったLIVE GRACE 2019 opus3、大変お疲れさまでした。

みんなプリンセスチュチュは見たほうがいいよ。


ムービー・演出編

奈々ちゃんが2日間に渡ってわかりにくくなかったか心配していたものの、そんなにあわあわするほどではなかったと思われる。

個人的には、ムービーが戴冠式からだったので「なんの試練もなくいきなり戴冠式とかまったく奈々ちゃんらしくない」と思っていたら、中盤になって突然ダンスバトルが始まってなぜか安心しました。

 

ただ、前半のムービーのうち、ライブタイトルが出るシーンは一連の流れからはちょっと外れているので、そこを繋げてしまうと「一度王様になったのに戻ったんかい!」となる可能性があるっぽい。あと、そもそも前半と後半のムービーは一部を除いてシーンの順番が逆なので(時計の時刻参照)、そこも混乱しやすいのでは。

 

時系列としては、下記が矛盾がないかと思いますがいかがでしょうか
(と言っていたら2019/01/20のスマギャンで言及されたの巻)。

 

  1. 戴冠式の舞踏会が始まる(ムービー後半)
  2. お付きの者?が奈々ちゃん(白)を呼びに来る(後半)
  3. 城から誰もいなくなり、奈々ちゃん(黒)と対決する(後半)
  4. 舞踏会が再開される(後半)
  5. 戴冠式(前半)
  6. ライブタイトル(王になったことを示すカットとして、あえて入れる場合。前半)
  7. ライブ本編(あえて入れる場合)
  8. 庭を眺めながら廊下を歩くシーン(後半)

 
Glorious Breakはライブタイトルが出た肖像画っぽいカットに被せる形で始まりますが、まさに栄光を讃える的開幕で非常に良かったですね。

 

初日は最後の廊下シーンが付け足しっぽく見えてズコーしている人も見られましたが、あれがないと幕が下りないですからね…ただ、ムービー2本に収めていることもあって若干の詰め込み感が出てしまったかも。

  

あとは小物について2点ほど。

 

(1)時計

時計は演出に使うと結構インパクトがあるので、時系列の説明だけに使うのはどうかと思っていましたが…誕生日時ということでスッキリ。しかし、33時間出産は想像するだに失神しそう。

 

(2)扉

毎度扉の使い方はすごく良くて、戴冠式では迎え入れられて扉が開くんですが、黒鳥のシーンだとあえて光を消してから触れる直前で招き入れられるようにして開くんですよね。ここは試練や受難という意味合いなので、そうだよねそうだよねという感じ。
ただ、Never let goのムービーを見るかぎり、モーセもビックリな試練が待っている可能性があるので、がんばってほしい。

 

ここぞというときのVIRGIN CODEやっぱり好きだよね?賞:VIRGIN CODE

1曲目が「いかにもやりそう」な直球ストレートだったので、2球目は変化球でなくてはならないという使命感として受け取りました。

 

その代償として、200超えBPMで苦しんだ曲としてほぼ名指しされていた。仕方ないね。

 

コスチューム賞:Love trippin'でワンテンポ遅れて揺れるドレスの裾

ロングドレスだからこそのワンテンポ遅れがロマンチシズムすぎる……。

 

あと、3着目の白衣装は帽子が完全にインペリアルでクスッときました。

 

 

流れが最高で賞:Love trippin'→Nocturne -revision-→アンティークナハトムジーク/夢幻

どう考えても泥沼化している。昼ドラかな?

アンティークナハトムジークが2日目で夢幻に変わるのはあまりに解釈一致ですが、いずれにせよ事態は好転していないっぽい。


演出まわりでの引用はほとんど見られないものの、ここだけ白鳥の湖っぽいですよね。

 


観客よりノリノリだったのでは賞:コーラス隊の皆さん

オケに比べるとコーラス隊は比較的余裕があるからか、WHAT YOU WANTとかノリノリで拳を突き上げていらっしゃったのでビビった。

 

SNSなんかを見てもノリノリの方が多くて幸せな気持ちになりました。
ステージ最後列と500レベル最後列で一体感があるっていいですね。

 

 

どうしても目立つで賞:エリック・ミヤシロ

2日目、後ろの観客に「白髪の黒バンド」とか言われていて気の毒でしたが、あれは金髪です!!!

 

おそらく、今回も氏でないと出せないハイノートがどこかで発生したのであろう。
ありがとうございました。

 


最優秀賞:愛の星

愛の星はバラードですが歌詞にスケールがあるので、大会場にハマるという経験があります(GALAXY/FRONTIER)。
一方で、このスケールを小さい体ひとつで歌いあげることへの気持ちよさがちょっとあるので、コーラスってどうなんだろう…と思っていましたが、まあこれが賛美歌的で荘厳な厚みがあり非常ーーーに良かったですね。オケ、とくに弦との相性は言うまでもなし。

 

本当はDancing in the velvet moonにしたいという気持ちがめちゃくちゃあるのですが、あれは個人的にはトロッコではなかった……。
舞台美術もキてたので、大人数のコーラスとオケを背負ってステージどセンターでピンク~紫のライトをバシっと浴びて欲しかった……。
今回はあんまり解釈違いっぽいことがなかったのですが、ここだけ残念。他にどの曲にするんだと言われると、候補もないですが。

 

愛の星はアンコール締めのSTORIESともリンクするところがあり、2019年ひいてはさんじゅう…歳の奈々ちゃんを締めくくるライブとしてはピッタリな選曲ではないでしょうか。

 


全体的に、1日目でしっくり来なかったところが2日目にがっちりハマった部分が多く(ライブの演出を消化できるまで考えないと気が済まないので)、2日目の満足度が非常に高かったですね。
ただ、3回目ともなると若干の慣れがあるものの、本来あの人数のオケは単体で成立するので、それをバックに歌えるというのはやはり化物なのでは(言い方!)。

そして、しんどいと言いながらもうれしそうに奈々ちゃんとお辞儀をしていたムッシュや藤野さんは相変わらず最高でした。


また、大人数のオケとの比較でアコースティックやタイマンの良さも際立ったので、よりシンプルな構成でのTHEATER2が聞きたいですね。

魔法少女リリカルなのは Detonationがすごかった話

聡明な皆さんにおかれましては、魔法少女リリカルなのは Detonationはもうご覧になりましたね?
というわけで、Detonationがすごかった話をします。
シャマルはチート


何が良かったのか

高町なのはという個人に、ここに来てようやく向き合ったことです。
つまり、それはシリーズタイトルの回収でもあります。

 

なのははいつも「つらい思いをしている人や泣いている人を助けたい」と言っていました。まあそれはわかるんですが、君は衛宮士郎的なトラウマでもあるのかね?という原点や理由は、1stの戦闘シーンで一瞬差し込まれるカットから推察するほかありません(もしくは地上波を見るか)。

 

また、限られた尺で救助される側の背景をしっかり描く劇場版では、なのはは人助けが好きな心優しい女の子という見え方と、救助マシーン的な役割や強さが強調されがちです。

 

その結果、なぜそこまで救助にこだわるのか、なのははなんのために対話したり戦ったりしているのかが描かれていなかった点が、1st~Reflectionにおける不満な点でした。

 

フェイトはお母さんに愛されたい・認められたい、はやてはようやくできた家族と一緒にいたいという気持ちが最初に描かれていたので、そこからの変容も比較的すんなり受け入れられましたが、なのはは本当にそのままでいいのか?

 

なのは自身の話は、いつになったら描かれるのか?
それともなのはは強くて完璧超人なので、そんな必要はないのか?

 

そんなモヤモヤに対する回答が、Detonationでした。


何がすごかったのか

衝撃的だったという意味では、高町なのはを、作劇上一度死亡させたことです。

 

具体的な流れとしては、以下のとおり。

  • 衛星兵器、衛星防衛用アンドロイド、黒幕のバックアップの3つを撃墜する必要が発生し、なのはとアミティエが大気圏外へ向かう
  • アミティエがバックアップを撃墜するが、アンドロイドによる致命傷で負傷離脱
  • なのは1人でアンドロイドと戦闘後、衛星兵器を撃墜するが、アンドロイドがなのはを巻き込んで自爆
  • おそらくBJの一部パージにより全身が吹き飛びこそしなかったものの、右腕喪失、右目失明
  • さらにRHが破損し生命維持が困難に
  • 最後の詰めが甘かったことを後悔しつつも、皆(地球)を守れたことに安堵し、なのはは目を閉じる

もちろん絶命してはいないのですが、撃墜というレベルではないうえ、完全に一度生きることを諦めています。

 

しかし、なのはは再び目を覚まします。

 

その後、子供のころ(今も子供ですが)の自分と向き合うことで、魔法という力を手に入れて無力ではなくなった自分が誰かを助けたことを噛み締めつつ、助けた誰かにまた自分も助けられていることに気づきます。ふたたび目を開けると、そこには自分を助けに来たフェイトとはやてが。

 

Detonationはほぼ全編クライマックス状態ですが、最も重きを置いたのはこの流れではないでしょうか。

ただ、映画としてはイリスとユーリ、フローリアン姉妹の話に決着をつける必要があるので、なのはの話をじっくりやるわけにもいかず。というわけで、もちろん個々のキャラクターをメインストーリーに沿って立ち回らせつつも、おそらく「最後のシーンにどれだけ強度をもたせられるか」という意図で、それまでのシーンを組み立てたのでは。
具体的には、なのはと防衛用アンドロイドの戦闘を劇場版なのはシリーズ自体の総決算とし、かつそれに続くシーンをなのはの新たな一歩として際立たせるということです。

 

以下、自分にはこのあたりがクライマックスの補強に見えましたシリーズです。


Reflectionの役割

まず単純に、ReflectionとDetonationでなのフェイが棲み分けています。
Reflectionは、フェイトはリンディさんとのサブエピソードがスポットを浴びており、かつなのはに庇われるシーンも印象的でした(当社比)。
一方Detonationでは、フェイトはレヴィとの絡みもありつつ、なのはを一番近くで支える人という位置づけが強化されています(ブラストカラミティまでの流れなど)。

また、Reflection締めの絶対に守る宣言も、当初は「なのはの決め台詞とドアップで締めるんだな」くらいにしか思っていませんでしたが、Detonationラストへの布石になっています。


アンドロイド(群体イリス)の設定

地下鉄でのシグナム対アンドロイドの会話にあった「会話できる個体とそうでない個体がある」という話。階級があるのは自然なことですが、会話できる個体は量産型よりも明らかに強く、さらに見た目も異なっていました。

ところが、なのはが最後に戦ったのは、強くて見た目も違うのに、会話ができない個体でした。
あのシーケンスは、特別な個体であるという以上に、まず対話してそれでもダメなら武力行使という定番スタイルの復習でもあります。


また、特定個人になのはが負けるのではなく、なのはを機械的に退場させる舞台装置というメタい意味合いも強いのではないかと。


フォーミュラ(アクセラレータ)と魔術の融合

シリーズが進むごとに装備をパワーアップさせてきたので、Reflectionの最後あたりから最早どういう状態なのかわからなくなっていましたが、Detonationではなのはがアクセラレータを無理矢理発動させてアミティエを助けるシーンがありました。

 

もともと、アクセラレータを使うと体に負荷がかかるのは、アミティエ自身で描写されてきたこと。
A'sでのベルカ式カートリッジの追加、Reflectionでのフォーミュラ追加ときて、Detonationでは体に鞭打ってまで使ったアクセラレータ。誰かを助けるためなら瞬時に自分を犠牲にする判断ができる危うさと、助けられない無力な自分への恐怖が短いシーンに込められていました。

 

もちろん、これはなのはが魔力とフォーミュラを融合させたことで山ちゃんのモチベーションがアップするというイベントでもあります。


消滅したディアーチェ

戦闘不能になったシュテルとレヴィから魔力を受け取ったディアーチェが、ユーリへの恩返しと称して全魔力を使った攻撃を放つシーン。
誰かを守るためなら死んでもいい、という点ではなのはのシーンと共通しています。

 

3匹組については、2人を消さずに3人で合体技的なこともあり得たとは思いますが、その前の時点でやっていることや、絵的にブラストカラミティと被るのでナシかなと。しかし、イリスはともかく、ユーリは何回倒されてるんだ? 2回?


アミティエとなのは

クライマックスで危険を顧みずに大気圏外に浮上したり、ボロボロの状態で山ちゃんに特攻したりと、しっかり者なのに意外と無茶をするアミティエ。キャラクターとしてはなのはに近いところもあります(なのはほど頑固ではなさそうだけども)。

 

ただ、あのシーンって別に2人とも浮上させる必要はなく、なんならなのは1人で上がったほうが今回のコンセプトには近い可能性もあります。
2人にした理由としては、アミティエが傷つきながらも帰還したことで、逆になのはは帰って来られないんだろうなと予感させる他に、途中離脱することで、なのはは最初から孤軍奮闘したいわけではなく、結果的に1人になってしまったことの強調でもあります。

 

これはフォーミュラが足りない問題も同じだと思っていて、本当は(それこそお商売としては)フェイトのフォーミュラバージョンとかあるべきなんですよね。だけど、フェイトやはやては強化させず、なのはだけが1人違う世界へいってしまう
でも、2人はなのはと同じところまで上がってきて、なのはを抱きしめてくれるんです。

ちなみに、アミティエは土手っ腹に風穴が開いても生還するので、右腕が吹き飛んだくらい大丈夫だろうという謎の安心感を与える役割もあります(あるのか?)。


キリエ覚醒シーン

不器用だが聞き分けがよく賢い姉に比べると、騙されたとはいえ視野狭窄に見えがちなキリエ…でしたが、なのはたちとの交流を経て、悲しい経験をしたイリスを守り、寄り添うことを決意します(挿入歌つき)。

なのはシリーズではお馴染みのコースですが、きっとイリスへもなのはの思いが引き継がれていくはず。

 


というような導線をたどった先にあるのがあのクライマックスだとすると、あのタイマン勝負にすべて詰まっているし、なのはとなのはの魔法がすべてを繋いだのだと思わずにいられません。

 

(そういえば、防衛用アンドロイドとの決戦ではなのはのBJがほぼパージされ、強烈なストレートを顔面に食らわせるのですが、あれってやっぱり地上波の対アリサビンタリスペクトなんだろうか……)

 

少なくとも小学生なのはの話はこれで終わりでは

お話がなのはに回帰しただけでなく、劇中で小学校を卒業していること、エンディング曲が地上波1期を意識していることからも、小学生のなのはの話は一旦幕引きでしょうね。
パンフレットでは、都築パパはなのはシリーズの新作を匂わせてはいるものの、Detonationの続きではないと思います。

 

いやー、なのは、長い間お疲れさまでした。そして、これからもよろしく。